動くな、死ね、甦れ!
1990年のカンヌ国際映画祭でカメラ・ドールを受賞し、伝説となったヴィターリー・カネフスキーの自伝的作品「動くな、死ね、甦れ!」。
第二次大戦後のソ連。収容所の街で暮らす少年ワレルカ。仲の良い少女ガリーヤとは、競うようにお茶売りをしたり、イタズラしたり。やがて二人は悲劇に向かって行くのだった。
タイトルは知ってましたけど、観てない作品のひとつ(いや、そういうのは山ほどあるけど)。今回ユーロスペースでのカネフスキー特集にあわせて、観てきました。
収容所のある炭坑町での底辺の暮らしを余儀なくされた少年の姿、過酷な様子、時折挿入される「南国土佐を後にして」などの日本民謡がのどかに聞こえる。実際は収容所の日本軍兵士の捕虜が、望郷の念で歌っているのだが。
鮮烈な描写が続く中、思いもかけないクライマックス。これを観ながら先行作品のいくつかを容易に思い浮かべるだろう。
しかしそこでこの作品は終わらない。フィクションであることを解体し、それまでドキュメント的に観ていた観客に、シュールな映像を突きつけてエンドを迎えるのだ。まさにはしごを外されたかのような感覚。
映画がカメラを前にした作り物であることを、我々は知っている。でも知っていると思いつつ映像を目にしていると、そのことをどこか忘れてしまうのだ。
この「動くな、死ね、甦れ!」がその虚実の境界を越えてみせる傑作である。しかしながら、カネフスキーがその後の作品で、その輝きを失っていったのは、必然かもしれない。なぜならこの境界を越えて生き延びた作家など、ほとんどいない。いやひとりゴダールのみが……とか言い出すと蓮實重彦になりますので、その手の評論はそちらを読んでいただければ。
誰もがわかりやすい感動をするとか、そういうことはないかもしれませんが、時々、世界観を激しく揺さぶられるこういう作品を観ると、手垢にまみれた自分の脳がリセットされるというか、新鮮な気持ちになりますね。
というわけで、「観るべし」というより、観た方が良い、一本です。






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