とある方からのオススメ本だったので、読んでみたらこれは面白かった!
扶桑社の文芸誌「en-taxi」に連載された句会記録をまとめた「角川春樹句会手帖」。
ある日突然、「句会をやるから俳句を二十句作って持ってこい」といわれたらどうしますか?
しかもその句会の評者はかの角川春樹。かつて角川書店社長として、出版の傍ら、「犬神家の一族」に始まる角川映画を作り上げた、あの角川春樹ですよ。
知らないひとは知らないが、角川春樹は俳人として「信長の首」「花咲爺」などの句集を出しているので、そんな人物が待ちかまえているところに、「素人なので俳句は出来ませんでした」と逃げることは許されない。
かくて哀れなる新人俳人たちは、必死の思いで慣れぬ手付きで俳句を捻って、おずおずと差し出すのである。
福田和也、寸(←福田氏の弟子)、佐藤和歌子、石丸元章、北方謙三、中畑貴志、澤口知之、斉藤斎藤、田中悠貴、茂木健一郎、斎藤環、藤原敬之、前島篤志、さいとう健、菊池成孔、佐伯一麦、島田雅彦、ねじめ正一、高橋春男。
とまあ、これらそれぞれの分野のトップの面々が、俳句を捻ってくるんですが、それぞれ、やっぱり人を見事に表すんですよ。北方謙三はハードボイルドだし、石丸元章はヤバ目のネタにはしり、島田雅彦はやっぱり色ネタだしね。
わたしは普段、俳句も短歌も詩も、その手のたぐいにはあまりふれないのですが、かつて角川春樹の句集「信長の首」は読んだことがあって、それで俳句の概念をひっくり返されたというか、ビックリしたのを覚えています。
なんていうのかな、真剣がずらりと並んでいるような感じというのかな、下手に触れると手が切れそうな感じがしたのを覚えています。
向日葵や信長の首斬り落とす
これは角川春樹の代表句ですけどね、なんかねえ壮烈ですよねえ。
話を戻すと、今回の句会では、飲み食いしながら(この句会では必ず何か食事しながら行われる)素人俳句が角川春樹の手にかかって直されると、あら不思議。見事な俳句になっていくのです。
例えていうと、麻雀で、おもしろみのない手牌なのに、角川春樹が「ちょっとかしてみ」と一回自摸(ツモ)っただけで、見事な手牌に早変わり、ということになるのです。
時々やりすぎて、角川春樹の句になってしまうところはご愛敬ですが。
俳句の入門本とか、そういうものではないけれど、ワークショップの記録として読むと、はるかに面白く、臨場感があって、句会の末席にいるようなワクワク感が味わえるんですね。
それに合間に出てくる食事が旨そうなんです。何故だろうと思ったら、この作者(というか句会の記録者)である佐藤和歌子さんって、焼き肉屋の食べ歩きエッセイ「悶々ホルモン」の作者なんですね。なるほど食事の席の臨場感が見事なわけです。
ちなみに、今回登場した俳句のなかで、読んで一番面白かったのは、歌人である斉藤斎藤さんのやつですね。
角川文庫生乾きでもにおわない
費用対効果 ヤクルト対巨人
震度3いつでも抱ける肉ひとつ
おれがよく言っておくから日本の夏
なんだか面白い。
これが北方謙三だと、当たり前すぎる。
音なしのシェイカーを振りし修羅がいる
俺が立ち舞う枯葉さえ波にけり
ね、やっぱり北方ハードボイルドでしょ。
どうせなら「ソープ行け吠えるおやじの枯木道」とかでどうだ。(笑)
あと斎藤環の句はオタク的には可笑しかった。
大宇宙昭和のおたく「そら」とルビ
しばらくは父も子もなしゲド戦記
はははっはははあはっはは。
というわけで、読み終わると、ちょっと自分も俳句をやってみようかしらんという気になってきますので、だまされたと思って一度読んでみてはいかがでしょうか。
あ、決まり文句を忘れてた。せっかくだから一句詠んでみます。
読むべしといわずば喰われし海鼠の日
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