長らく松竹の看板シリーズとして続いてきた西田敏行、三国連太郎の「釣りバカ日誌」シリーズ。今回は社長として活躍してきたスーさんがついに会長職に退く、シリーズ20作目の記念作「釣りバカ日誌18」。
鈴木建設の社長として、戦後から第一線で働き続けてきたスーさんこと鈴木一之助が、社長を退き、会長職に就任した。その会長就任の挨拶で言葉が出ないスーさんを助けたのが、ハマちゃんこと営業三課の浜崎伝助。
会長になってからしばらくして、スーさんは失踪する。スーさんを探しにハマちゃんも出かけるが、その居場所は、美しい瀬戸内海を望む岡山だった。スーさんはお寺で泊めてもらって親切にしてもらっていたのだ。
美しい浜にリゾート施設の建設が進み、スーさんとハマちゃんは住民たちの反対運動に参加することに。しかしそのリゾート施設の建設は鈴木建設が行っていたのだ。どうするハマちゃんスーさん。
シリーズは「14」から朝原雄三監督が5作連続で撮っているのですが、今回、その朝原釣りバカの最高傑作と言えるのではないでしょうか。
本音を言うと、朝原監督に交代してからの「釣りバカ」は、主演二人の衰えとモチーフの疲弊も重なってあまり好きではありませんでした。「14」は三宅裕司を呼んでサラ専VS釣りバカをやってみせたものの、監督新人賞を獲った「15」も「麦秋」の出来の悪いコピーにしか見えなかったし、その次の「16」は行きすぎたドタバタが見苦しく、「17」はついに観なかったのです。
でも今回はスーさんが会長になるというので、これは観ておかねばと思って。これが大正解!
スーさんの会長就任挨拶という、最初からクライマックスだぜ! で始まりますが、これがシリーズを見続けたことへの感慨深さと大ホールでのスペクタクルもあいまって、かなりの見応えがあります。でも、いきなりこんなおいしいものを持ってきたら、あとどうするの? と思ったらさにあらず。最初から最後までクライマックスだぜ!
実は今作はスーさんが会長職になることで、「釣りバカ日誌」の原点回帰を果たしています。それは何よりもまず「釣りバカ日誌」が“サラリーマン喜劇”であるということなのです。
スーさんが会長になることで、この作品が社長と平社員が、趣味の上では逆転してしまう楽しさを、改めて再確認させたのです。
今回は徹頭徹尾、会社と会社の立場、会社の持つ社会的役割と影響力を、地方でのリゾート開発の中で描き続けます。
リゾート開発を鈴木建設自身がやっているという話は、シリーズ初期の「3」でもありました。でも改めてそれを会長になったスーさんがやることで、スーさんの持つ社会人としての力を示しています。もっとも、とても水戸黄門的ご都合主義な解決方法なのは、監督以下スタッフも承知の上なので、わざわざスーさんに「禁じ手」といわせ、時代劇的に「一件落着」としゃべらせているのです。そうしないとこれ以上描こうとすると、釣りバカ世界を破壊しかねませんから。
物語の中心をスーさんに持ってきたことで、最近は消化不良だったハマちゃんとの丁々発止のやりとりも復活し、奈良岡朋子ついに浜崎家に登場とか、小生意気な鯉太郎の意外な活躍、みち子さんとの合体など、数々のお約束も盛り込んでます。
「武士の一分」に続き、檀れいはマドンナとしてぴったりですね。世間的にはCM以外それほど露出も高くない分、古風で清楚な感じが「釣りバカ」世界の中では映えますね。金麦冷やして待っててくれてるんでしょうか。
しかし、檀れいは宝塚出身だし、相手役の高嶋政伸はもちろん高島忠夫・寿美花代の次男坊、「若大将」シリーズのヒロイン星由里子までも登場となると、最初の富士山がなかったら、ほとんど東宝サラリーマン喜劇。
そうだ谷啓さんもいたな。よくよく考えると、クレージーキャッツの中で残りは、犬塚弘と桜井センリという山田洋次作品の常連三人だけになっちゃったんですね。
谷啓さんも、隠居してたまに会社に遊びに来る佐々木さんとか、そういうことでもいいかもしれないなあ。
いや、それをスタッフはわかってて、なおかつ各シーンも数々の映画的引用を片っ端からやっている。スーさんがいなくなった会長室での役員たちのやりとりは「天国と地獄」、瀬戸内海を望む丘の上の寺での三国連太郎と星由里子のシーンは「東京物語」、小沢昭一登場は「ゴッドファーザー」的こころですねえ。
あと、スタッフは多分客にバレないと思いながらも、寺の集会シーンの黒板に、日本映画の名キャメラマンの名前が書き連ねてあったり。観ててニヤニヤ。
そして最後にもう一度、最初のクライマックスをひっくり返して笑わせてくれます。素晴らしい!
ここまできれいに落としてみせたのはシリーズでもそうそうなかったのではないかな。
いうなればこれは釣りバカ版「007/カジノ・ロワイヤル」とも言えるでしょう。シリーズの原点に戻った楽しさに満ちています。
観るべし!
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