« 2007年日本インターネット映画大賞外国映画投票 | Main | 人のセックスを笑うな、ほか »

2008.01.17

安原製作所回顧録

こりゃ、メチャメチャ面白い本を見つけた!

あなたが「あの○○会社の○○が欲しい」と思ってものを買う場合、その製品がどのように考えて企画され開発され、製品となり、どのような方法で販売され、店頭で見かけるのか、考えることは少ないし、それを一目でわかる形で紹介されることは少ないだろう。

しかし、その一連の流れが“カメラ開発・製造・販売”という形で明かされる一冊。
安原伸「安原製作所回顧録」(えい文庫)(“えい”は木偏に世と書く)


かつて“安原製作所”という名前のカメラメーカーが存在した。
この本は、有名カメラメーカー技術者だった筆者が、退社後たった一人で企業を立ち上げ、フィルムカメラを開発し販売し、そして消えていった1998年から2004年までの激動の記録を、当人自らが筆を執った回顧録である。

1998年当時、カメラ雑誌に掲載されたクラシカルなデザインのカメラを記憶している。“安原一式”という名のそのカメラは、たった一人の技術者が立ち上げた会社で開発し、中国の工場で生産し、ネットで販売するというものだった。これに多くのカメラマニアが注目し熱狂した。
大きな企業で開発され、性能的には申し分のないカメラが市場にあふれていたのに、このカメラになぜ魅せられたのか? そこには「複雑になってしまった世界にたった一人で立ち向かう」ロマンを、多くの人がこのカメラ開発に感じたからに違いない。
とはいえ、このカメラは、発表時の熱狂と裏腹に、実際の販売成功とまで行かず、会社も短命に終わってしまった。その実情と、デジタル化への波が押し寄せたカメラ業界の激動、中国工場での開発生産に巻き起こる苦難の道のりが、冷静な筆致で明かされていく。

筆者が開発から販売、取材までをこなした(たった一人の企業なので当然といえば当然だが)ことで、「メーカーがものを作って売るまでの考え方・行動のあり方」がこの一冊で見渡せるようになっている。これがニコンやキヤノンなどの有名メーカーの「ヒット商品開発裏話」では、その企業の大きさ故に決して描かれなかった部分であり、類書では味わえない面白さになっている。

のみならず、メーカーと、販売小売業と、カメラマニアというものの存在によって持ちつ持たれつ生きてきたカメラ業界全体の構図、それが一気に変革した20世紀末から現在までの様子も、それぞれ冷徹な筆で腑分けされる。
なぜ、メーカーにはブランド名が必要なのか、開発にかかるコストとは、マニアの言い分がいかに的外れなものでありながら、そのマニアがいなければ成り立たない業界とはいったいどんな世界なのか。

あなたがカメラ好きか、メカ好きか、はたまたメーカーというもののあり方に興味があるならば、是非手に取っていただきたい一冊。
いや、これは「ものを作って売る」行為に関わる人、「あのメーカーのブランドにあこがれてものを買う人」全てが読むべき本である。

超オススメ。買って読んで、絶対損はさせません。

読むべし!

|

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/17632/17721707

Listed below are links to weblogs that reference 安原製作所回顧録:

Comments

こんにちは。月虎です。
記事を読んで共感と感動をおぼえました!
物作りの情熱というのはこういう事をいうのですね。この本は是非買わねばなりません。とっても勇気づけられそうです。

夢につながる記事をどうもです!

Posted by: 月虎 | 2008.01.19 at 09:21 PM

コメントありがとうございます。
カメラマニア向けの本かもしれないけれど、読んでみれば面白いと思います。
是非、感想も教えてください。

Posted by: KIYO | 2008.01.22 at 12:58 PM

Post a comment