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March 2008

2008.03.23

パンダコパンダ

高畑勲、宮崎駿コンビが送り出した、無類に楽しめる短編作品シリーズが、最近の宮崎駿作品しか知らない子供たちのためにリバイバル公開。
少女とパンダの親子が楽しく暮らす二本立て「パンダコパンダ」「パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」

ミミ子はおばあちゃんが法事で長崎まで行くことになり、その間一人でお留守番することになりました。でも元気なミミちゃんはひとりでも平気です。炊事洗濯お掃除なんでも出来ます。そんなミミちゃんのおうちにお客さんがやってきました。なんとパンダの親子です。うれしくなったミミちゃんとパンダの親子は一緒に暮らすことにしました。

キャストやスタッフの名前が懐かしいなあ。お巡りさん役に山田康雄、原画に小田部羊一や近藤喜文が。
一昔前までは、公民館のマンガ映画大会とかで必ずこの「パンダコパンダ」ってやってたんだよね。これってランラン・カンカンが来たときに作ったアニメですよね、確か。え、ランラン・カンカンを知らない?

あちこちで言われていることだし、観れば一発でわかりますが、「となりのトトロ」の原型とも言うべき作品。パパンダは大トトロだし、コパンダは小トトロ。ミミちゃんはメイの原型キャラです。
だいたい、オープニングがその後の「トトロ」ではまんまだしね。

ミミちゃんが作る目玉焼きが旨そうで、あれを観るだけで、ああ高畑=宮崎作品だと思うもんな。
「アルプスの少女ハイジ」でも「白パンは柔らかくておいしい」とすり込まれたのは世界中の子供たちも皆同じ。
それにしても、宮崎駿もまったく同じことをやり続けてるんだよなあ。
「ハウルの動く城」で久々に食事シーンが出てきて、ちょっとうれしかったけど。

恐ろしいことに、あれから36年過ぎたのに、観ている間、子供たちが笑って楽しんで、帰りにパンダコパンダのうたを歌いながら帰る姿はまったく変わらないのです。というか、そんな作品、いったいどれだけありますかね。

DVDも普通にありますので、最近の宮崎アニメしか知らない方は、親子で是非ご覧になってくださいまし。


観るべし。

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マイ・ブリーベリー・ナイツ

「恋する惑星」「ブエノスアイレス」「花様年華」「2046」など、香港出身にして世界的評価の高いウォン・カーウァイ監督の最新作は、歌姫ノラ・ジョーンズを主演に迎え、失恋の痛手からニューヨークからアメリカを横断する女性と、彼女を想うカフェのオーナー、また旅先で出会う人々の喪失と再生を描く「マイ・ブリーベリー・ナイツ」


ニューヨークの夜。カフェに立ち寄ったエリザベスは、その店のオーナーに部屋の鍵を預ける。別れた彼が来たら渡して欲しいと。そんなエリザベスに、オーナーのジェレミーは優しくする。そして店で売れ残ったブルーベリーパイを食べるエリザベス。まるで取り残された自分と重ね合わせるように。
そして旅に出たエリザベスは様々な人と出会い、そこでの出来事を手紙に書いてジェレミーに送るのだった。

やっぱり、ウォン・カーウァイは、気合い入れて映画作らせたらいけませんな。こういう「しょうがないからアリものでサクッと作りました」みたいな映画の方が絶対いい。「恋する惑星」がそうだったように。

というか、日本でウォン・カーウァイがブレイクした「恋する惑星」の英語版みたいなものというか、まんまっていうか。
ノラ・ジョーンズはあれはノラの様に見えますが、中身はフェイ・ウォンです。ジュード・ロウは金城武ね。で、途中で出会う中年警官がトニー・レオン。あらびっくりそのまんま。ノラがいつ「夢中人」を歌うのかと思いました。

即興演出はいつものままのようなので、こういうロードムービーで95分というサクッとした長さだとぴったり。
選曲もいいし、ウォン・カーウァイ入門編としては良い感じだと思います。
サントラ買おうかな。

撮影は凝りまくっている(いつものクリストファー・ドイルじゃなく、「セブン」や「ロスト・チルドレン」の撮影監督ダリウス・コンジ)けれど、そんなに観づらくないし。
中盤に出てくる飲んだくれの中年警官のエピソードは脚本に参加したローレンス・ブロック(「八百万の死にざま」)によるものかな、でもばっちりカーウァイ世界の住人だね。

ただ、これでハリウッドの足がかりになって、気合いの入った映画とか作るとなあ。例えばジュード・ロウ主演でSFで、ロボットが愛の喪失を語るとか……って、そりゃスピルバーグの「A.I.」だ。(笑)


てなところで、絶対とは言わないけど、ウォン・カーウァイ作品を今まで見たことのないという人には、優しい口当たりの作品だと思います。
でもこのブルーベリーパイは、それなりに酸味もきいてるかもよ。

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2008.03.21

魔法にかけられて

ディズニーアニメの世界のキャラクターが現実世界に現れたら、というユニークなアイデアで、魔法の国のプリンセスとニューヨークの弁護士との恋物語を描くファンタジー映画「魔法にかけられて」


アンダレーシアの姫ジゼル。森で動物たちと暮らすジゼルは、自分を迎えに来てくれる王子を待っている。そこに現れたエドワード王子。二人は恋に落ち、エドワードに求婚されるジゼル。結婚のためお城にやってきたジゼルだったが、彼女の存在を疎ましく思う女王ナリッサは、一計を案じ、ジゼルを井戸に突き落としてしまう。その井戸の先に広がっていたのは、なんと現代のニューヨークだった。魔法の国の約束事が通じない世界で、ジゼルを助けたのは現実主義者の弁護士ロバートだった。

いやあ、良くできてます。
誰もが思う「ディズニーアニメのお約束」を片っ端から自らネタにしまくって、笑わせながら、もう一度ひっくり返して感動させるなんて。

冒頭のアニメ部分も、わざわざスタンダードサイズ、2Dセルアニメ(実際はそう見えるように作画している)、台詞はディズニーコード(子供が真似しちゃいけないから汚い表現は言わない)とか、ここが徹底しているから、あとの実写パートのギャグが笑えるんですよ。
例えば、ディズニーコードギャグも、実は中盤でジゼルの成長と絡めてネタにするとかね。なんだかんだ言いつつセントラルパークで唄って踊ると感動するわあ。

しかし、冒頭で王子がトロール狩りをするなんて、どう考えても「シュレック」への当てこすり。いやあ、結構毒々しいわ。

笑わせながら、ファンタジーの力を信じることの大切さを謳うディズニー、最近はピクサーを取り入れたかに見えつつ、実はジョン・ラセターが実質の制作責任者になったことで、制作レベルが上がったよね。

あんまり細かく言うと興ざめなので、予備知識は少なくして、「ディズニーアニメって苦手なんだよな」という方にこそ観ていただきたい。絶対に笑えて感動します。


観るべし!

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2008.03.19

大崎善生「聖(さとし)の青春」

「ハチミツとクローバー」の羽海野チカの新作漫画「3月のライオン」は、プロ棋士になった少年の物語。主人公のライバル役の青年が、将棋好きなら誰でも知っているであろう、夭折した村山聖(さとし)八段をモデルにしている。
なんとなく懐かしくなって、大崎善生のノンフィクション「聖(さとし)の青春」(講談社文庫)を読んだ。
本書の存在は知っていたし、たしか藤原竜也主演のドラマも覚えているが、実際に読んだのは、はじめてだ。


“泣ける本”というのは、よくある惹句ではあるけれど、本当に「泣きながら読まされてしまう」本というのは、そうそうあるものではない。30代半ばになってそんな読書をするとは、思いもよらなかった。
棋士村山聖(さとし)八段の、29年の生涯を描いたノンフィクション「聖の青春」は、巻頭から読み終わるまで、病と闘い、将棋に命を削った村山聖の生き様に打ち震えてしまう。

幼少時にネフローゼという難病を抱え、それ故に常に死と隣り合わせの生活を余儀なくされた少年村山聖。気に入らないことがあれば献身的に支えてくれている両親にさえ横暴としかいえない行動をとる聖。その聖に唯一生きるすべを与えてくれたのが、将棋だったのだ。将棋盤の上ならば誰とでも対等に渡り合える。ものすごい勢いで将棋を覚えていく聖。
聖の目標は、当時21歳で名人位となった、天才・谷川浩司を倒して名人になること。それだけを望むのだ。
終生、聖を支え続けた師匠森信雄との出会い。自分の身の回りのことさえおぼつかないこの森が、丸々とした顔の中学生と生活を共にし、食事をさせ、洗髪し、洗濯までする。うまくいかないときは口癖の「冴えんなあ」とつぶやく森。
無類の強さを誇る聖であるのに、理不尽ともいえる理由で奨励会入りを一度は拒まれる。病でいつまで持つかわからない身体の聖にとって、それがどれだけ手ひどい仕打ちであったことか。
奨励会入りを果たし、頂点への階段を駆け上がっていく聖。すべてを将棋のために捧げ、対局に集中するために身体を動かさずにじっと温存する。それでも対局が終われば倒れ、病院に担ぎ込まれる日々。
そんな聖の前に、次々と現れるライバルたち。しかし聖にとっては本当に倒すべき相手は谷川浩司ただ一人。
そこにさらなるライバルが現れる。羽生善治。後に七冠を達成し、将棋界を超えて全国にその名を轟かせるこの青年が聖の前に立ちはだかるのだ。
それでも残る力を振り絞って将棋を指す聖に、残り時間はそれほど無かった……。


改めて気がついたのだが、村山聖は自分より2歳上、その生きた時代はまさしく自分の10代20代の頃を思い出していた。そうだった、確かにあのときの谷川浩司は天才以外の何者でもなかったし、それを上回る羽生善治は神の世界からやってきた人間だった。
一方、マンガ「さすがの猿飛」の主人公にそっくりなことからついたあだ名が「肉丸君」の村山聖も、その愛嬌から人気があったのだ。
血を吐くような(文字通り)将棋を指していた村山に、著者大崎善生が寄せる愛情が、行間からにじみ出てくる。なぜなら当時月刊「将棋世界」の編集長だった著者も、村山を愛し、世話をした一人だったからだ。何とかして村山聖が生きた証を残さなければという思いが駆り立て、この本を書かせたのだ。
その後著者は「パイロットフィッシュ」「アジアンタムブルー」などの小説を書くが、その作家・大崎善生を生み出したのは、村山聖なのだ。

時に両親につらく当たり、友人でありながらもライバルとして闘う棋士に横暴とも言える言葉を吐く聖。それもこれも生きるため、全ては将棋のため。
最大のライバルとなった羽生を行きつけの定食屋に食事に誘う村山の姿は、まるで恋する乙女のようだったという。なんといじらしいことか。

しかし、時間が足りない。あとちょっとで名人に手が届くのに、病魔が聖の身体をむしばんでいく。
読みながら思った。神様、村山聖を勝たせてやってください、名人にしてやってください。ひょっとしたらページをめくれば奇跡が起きて、村山が谷川を、羽生を、佐藤康光を倒して、名人になるシーンが読めるのではないかと思いながら。
そんなことがありえないことを知っているはずなのに。わかっていながら、最後のページまで目が離せない。最期の瞬間のその時まで。

平成10年8月8日村山聖八段永眠。享年29歳。
あれから10年。


読むべし。

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2008.03.17

瀬名秀明「Every Breath / エヴリブレス」

瀬名秀明の新刊は、ラジオドラマ用の原作として書かれた、ある女性の100年の人生と、三代にわたる愛の物語「Every Breath / エヴリブレス」


八歳の杏子は、二歳年上の洋平と奈良の大和郡山を駈けていた。そこで見た空に輝く<帚星>。ここから100年にわたる杏子の人生と、彼女から受け継いだ子供、孫の物語は始まる。成長した杏子の前にアーティストとして“洋平”が現れるのだった。

TOKYOFMのラジオドラマ用原作として書かれたので、女性が主人公のラブストーリーではあるし、文体も意識的に読みやすく、そこかしこにラジオドラマ用にBGMが指定してある。けど、そこはそれやっぱり、ひとクセもふたクセもある話になってます。

最初は設定を聞いたとき、「千年女優」か? と思ったけど、ちょっと違った。また、タイトルから想像してiPodでThe Policeを聴きながら(「Every Breath You Take(見つめていたい)」ですね)読んでいたんですが、それも違ってた。
大ネタ部分としてはグレッグ・イーガンがラブストーリーを書いたらこうなるというかなんというか。
いやもうなんていうか、わかる人にだけ伝わる書き方をしますが、瀬名秀明版「電王」なんですよ。愛理と桜井ですよ、これ。あれは特異点なのか。

瀬名さんの「八月の博物館」「虹の天象儀」ラインのリリカルな世界観の物語の集大成と発展形ともいえ、クライマックスで不覚にもグッと来てしまいました。一般的には上記2作品よりもオススメしやすい作品じゃないかと思います。

しかしまさか宇宙館が出てくるとは思わなかったなー。


リンク先で、ラジオドラマも聴けるみたいですし(Macだと聴けない)、そちらでもお試しあれ。

読むべし!

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ノーカントリー

コーエン兄弟の新作は、コーマック・マッカーシーの犯罪小説「血と暴力の国」を原作に、大金を手に入れた男とそれを追う非情な殺し屋、この事件を追う老いた保安官が織りなすクライムサスペンスにして、第80回アカデミー作品賞を受賞した「ノーカントリー」


1980年、テキサス。国境近くの荒野で、モスは数台の車が止まっているのを見つける。そこにあったのは銃撃戦のあとで死体となった男たち。車には大量のヘロインと200万ドルの現金。モスは金を奪うが、それを追って来たのは、酸素ボンベを武器にして、コインの裏表で殺しを決める不気味な男アントン・シガー。そしてこの事件を知り、モスを探す老保安官ベル。しかし、逃げるモスと追うシガーの行く手には、血で血を洗う地獄の道となっていくのだった。

コーエン兄弟、相変わらず完成度の高い作品作りをしますなあ。
アカデミー助演男優賞を獲ったハビエル・バルデスの怪演も見事ですが、作品全体を覆う、荒涼たるアメリカの描き方が、コーエン兄弟以外にはとても真似の出来るものではありません。

実をいうと、コーエン兄弟は上手いとは思うものの、そんなに個人的に相性が良いと思えず、気がついてみると劇場で観たのがなんと「ファーゴ」以来! そんなにご無沙汰していたのね。

今回は原作つきとはいえ、B級ジャンルの題材を独特の間で描くコーエン節は健在。意味があるんだか無いんだかよくわからない殺し屋の台詞や、唐突に起こるアクションなど、さらに洗練されているなあと思います。

テキサスと言えば、チェーンソーを振り回すレザーフェイスが有名ですが、こちらは酸素ボンベで人殺しをするという、よくよく考えるとふざけた話で、コーエン兄弟のオフビートな笑いとサスペンスは紙一重なのです。ともかくべらぼうに上手い。

と、じゃあ好きかって訊かれると……、うーんまあやっぱりそんなに自分の好みとは違うなあと。コーエン兄弟の手がけるネタって、基本的に好きなネタばかりなのね。逆にそのせいかもしれないけど、それぞれの処理や展開のさせ方がなんか自分の肌と違うなあと思うところが端々に。
ま、私もオールラウンドではないので、納得のいかない方は、絶賛されている他の方の感想を参考にしてくださいまし。

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2008.03.16

スルース

ローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケインの二人の名優で傑作の名を残した心理サスペンスミステリ映画「探偵 / スルース」を、今度はマイケル・ケインとジュード・ロウの二人が挑戦、ケネス・ブラナー監督したリメイク「スルース」


探偵作家アンドリュー・ワイクの屋敷に、若い男がやってくる。彼の名はマイロ・ティンドル。ワイクの妻の愛人だ。妻との離婚を迫るティンドルに、ワイクは奇妙な提案を持ちかけるのだった。

元は舞台劇で、72年の映画で愛人役だったマイケル・ケインが今度は作家役になってジュード・ロウを迎え撃つわけで、リメイクというより舞台の再演ということで考える方が正しいかも。

原作に沿って今回も男二人芝居で火花を散らすのですが、前回の映画から今回は三幕目ががらりと変えてあるので、そこはどうなるか見物かも。

実はオリジナル映画を観たとき、二幕目のどんでん返しで笑っちゃったんだよなー。あれ舞台ならいざ知らず、映画だとリアルにわかっちゃうから、ギャグになっちゃうと思うんだけど。
今回どうするのかなと思ったら、そこは変わってなかったですね。でも技術は向上してますから、現代なら上手くいけるのかもしれない。

オリジナルの美術が、非常に凝りに凝った屋敷で観ていて楽しかったのですが、今回は近代化しているとはいえ、ダークでもっと舞台美術っぽいですね。
演出もそれにあわせたか、ちょっと陰鬱。元はもっとおしゃれで粋だったように思います。それに元はもっと長かったと思うけど、今回は90分と小粒。リメイクされると長くなる昨今なのに、逆は珍しいですね。

どうせなら、元の映画とあわせて観ることをオススメします。もしくは機会があれば日本でも舞台をやっていますからそれもいいかも。
でもオリジナル映画はビデオが出たきりなのです。今時DVDで出ていないので、この期に発売されることをお願いしたいですね。

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バンテージ・ポイント

傑作! 観るべし!

首脳会談の席上で起きた大統領暗殺テロを、その場にいたそれぞれの立場の人間から多角視点で描く極上のサスペンス。デニス・クエイド、マシュー・フォックス、フォレスト・ウィッテカーなど渋いキャストを揃えた「バンテージ・ポイント」


スペインのサマランカ広場で行われた首脳会談の演説。そこで起きたのはなんとアメリカ大統領の暗殺と会場の爆破テロだった。この現場に居合わせたテレビクルー、シークレットサービス、会場の観客などの視点から描かれるこの事件、しかしそこには驚くべき真相があったのだ。

いやー、良くできてます。
それぞれの登場人物の視点から物語が語られ、巻き戻して(本当に巻き戻るのだ)別の登場人物の視点になってまた事件の始まりから描かれる。で、どうなっちゃうのかなと思ったら、なんとなんとたたみかけるどんでん返し。
端役と思ったらクライマックスでちゃんと登場して、しかもこの事件を通してその登場人物たちが抱えたものをちゃんと獲得して終わるのです。これで上映時間90分、無駄なカットはひとつもありません!

デニス・クエイド、マシュー・フォックス(LOSTのジャックの人)、フォレスト・ウィッテカー(アミン大統領の人)、ウィリアム・ハートとかまあ、キャストが渋い渋い。でも演技の見せ所があちこちあって満足。なるほどこのお話なら「LOST」で忙しくても出演するわな。

あんまり書くとお話にふれざるを得ないのでこのあたりにしますが、地味目ながらおいしいネタ満載。「1カットだって飽きさせないお話」を期待するならこれはオススメ。方向は違うけど、昨年の日本映画「キサラギ」と同じく、こういうシナリオを書ける人がいるって素晴らしいね。
これ観ずに過ごすは映画好きの名が廃ります。

観るべし! 観るべし! 観るべし!

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犬と私の10の約束

作者不詳の「犬の十戒」を題材に、田中麗奈主演、本木克英監督による犬と飼い主との感動の物語「犬と私の10の約束」


あかりは医師の父と優しい母と暮らしていた。中学生のとき、あかりは子犬を見つけて飼うことにする。名前はソックス。飼うときに母親から「犬の十戒」を教えられる。それを守ることを約束させて母親は病気で亡くなってしまう。母親を亡くした悲しみも、幼なじみとの別れの時にも支えてくれたのはソックスだった。
そんなあかりは獣医の道を歩むことにあるのだが……。

まあこんなもんですかね。
トヨエツと田中麗奈の2ショットの度に、いつトヨエツが「大豆ですから」と言い出すんだろうと、ハラハラドキドキ、ってそれ映画のドキドキとは別だ。
お題が「犬の十戒」なので、要するに先の展開は決まっているわけです。予定調和から一歩も動かない。
ただ、主人公がせっかく獣医になったのに、肝心の飼い犬であるソックスが年老いても獣医らしい処置をまったくしないとか、幼なじみの加瀬亮演ずるクラシックギター演奏家の青年と恋を、彼の両親が快く思わないことに何らの理由がないとか、端々に詰めの甘さが見受けられるので、うーん。
もうちょっとシナリオを練って欲しかったところです。


本木克英監督は、このあと「ゲゲゲの鬼太郎2」「鴨川ホルモー」と作品が続くので、今後も期待したいところです。

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2008.03.04

ガチ☆ボーイ

「タイヨウのうた」の小泉徳宏監督の新作は、記憶障害の青年が学生プロレスに奮闘する姿を、佐藤隆太主演で描く「ガチ☆ボーイ」


北海道学院大学プロレス研究会に、ある時ひとりの青年が門をたたいた。その青年五十嵐は、去年の学園祭でプロレス研究会が試合をやっていたのをみて、入部したいというのだ。
物覚えがいまいちの五十嵐だったが、その一生懸命さに、プロレス研究会の部員たちも認めていく。
しかし、五十嵐には周囲に隠していた大きな問題を抱えていた。五十嵐は昨日のことを記憶できない記憶障害だったのだ。

「Shall we ダンス?」がある完成型を出したんですけど、“素人が身体を張って、挑戦する”話の一つですね。たとえば「がんばっていきまっしょい」「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」「フラガール」、最近だと「歓喜の歌」もママさんコーラスですし、「ブラブラバンバン」「うた魂」もそうですね。
その中でもこの「ガチ☆ボーイ」はなかなかの佳作ですよ。ちゃんとキャストが学生プロレスやってるんで、感動しましたね。
やっぱりこの手のヤツって、たとえやっているのが素人でも下手でもいいんだけど、“ちゃんとやってない”のってあっさり観客に伝わって来ちゃう。役者がクランクイン前にちょっと練習しました、ぐらいじゃだめなんですね。

その点、この「ガチ☆ボーイ」は学生プロレスらしいゆるさと、とはいえ一方での真剣さ、愛が伝わってきます。
主演の佐藤隆太は、プロレスも含め、全身全霊でがんばってます。そこがいい。
ヒロイン役のサエコもなかなか良い感じ。重くならない感じなのと、身近に好意を寄せたくなるカワイイ感じが出てます。そこにダルビッシュもやられたか?

この映画では“記憶障害”を題材に持ってきていますが、表に裏に上手く話に使った上に、安易な救いを持ってきてないところが好感が持てます。それやっちゃうとすぐ嘘つきになっちゃいますからね。

ヘイデン・クリステンセンと違って、佐藤隆太はジャンプひとつまともに出来ない青年を演じていますが、クライマックスの感動はあっちよりも大きいですよ。

観るべし!

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ジャンパー

アナキン・スカイウォーカーVSメイス・ウィンドウ!

「スター・ウォーズ」エピソードI〜IIIでアナキン・スカイウォーカーを演じたヘイデン・クリステンセンの新作は、テレポート能力を身につけた青年が、彼を狙う組織と闘うSFアクション「ジャンパー」


デイヴィッドは、ある時川でおぼれて死にそうになった。ところが水中でもがいているうちに、気がつくと図書館にいた。デイヴィッドにはテレポート能力があることがわかったのだ。
デイヴィッドは家を出ると、その力で銀行に忍び込み、大金を手に入れ、世界中を股にかける優雅な暮らしをするようになる。
ところが、デイヴィッドを狙うものたちがいた。デイヴィッドと同じような力を持つ“ジャンパー”を抹殺しようと組織の一員、ローランドの魔の手がのびる。デイヴィッドは自分自身だけでなく、周囲のものたちを守れるのか?

結局、ヘイデン、今回もダークサイドに堕ちまくりじゃん。
はっきりいって話は定型でありすぎて、そこから外れることはないんですけど、ジャンプの爽快感は確かに良く表現できていて、そこは見所かな。
ちゃんと世界各所でロケして、アクションもちゃんと撮っているので、演出的には「スター・ウォーズ」エピソードI〜IIIからすりゃ、私はかなりましだと思います。
っていうか、サミュエル・L・ジャクソンの持つ武器が、長い柄の電流棒で、あからさまにライトセーバーを意識させるし、とどめを刺す前に口上を述べるのも、「パルプ・フィクション」だよねえ。

ただ、90分というコンパクトな割にはあからさまに続編を意識した終わらせ方ってなんだか釈然としないな……ってこれ「ライラの冒険」とまったく同じ感想だけど。

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2008.03.01

アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生

暗殺の直前に撮られた、オノ・ヨーコにしがみついた裸のジョン・レノン、バラに埋もれたベット・ミドラー、デミ・ムーアの妊娠ヌードなど、誰もが一度は目にしたであろう写真を撮ったのが、写真家アニー・リーボヴィッツ。ローリングストーン誌やヴァニティ・フェア誌、ヴォーグなどの有名誌の表紙を飾った写真を撮った彼女の半生を、実妹バーバラ・リーボヴィッツが撮ったドキュメンタリー「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」


「マリー・アントワネット」の衣装に身を包んだキルスティン・ダンスト。ヴォーグ誌に載せる写真を撮っているのが、アニー・リーボヴィッツ。彼女の被写体は、著名なハリウッド・スターや政治家、はたまたコソボの紛争地帯も、アニーはカメラを向けていく。
若かりし頃、ローリングストーン誌のカメラマンとして働くアニー。その彼女の作品の中でもっとも有名になったのは、服を着たオノ・ヨーコに裸でしがみついたジョン・レノンの写真。マーク・チャップマンに暗殺される数時間前に撮られたことで、ローリングストーン誌のジョン・レノン追悼号に掲載され、誰もが忘れない一枚になったのだった。

いやもうパワフルなおばちゃんだなーと。
現場で「最高!」「素晴らしい!」と歓声を上げながらスターを撮っていく。「マリー・アントワネット」の写真なんて、本編よりかっこいいしね。
やっぱり良いカメラマンは、被写体になる相手を盛り上げたりするのは長けてますよね。

監督が実妹だから、そばでカメラを回していても大丈夫だったのかもしれない。その分、本人もリラックスしているけれど、逆に身内だからこその遠慮からか突っ込みが浅い感じも。
スーザン・ソンダクとのパートナー関係であったり、彼女の死後、子供を作ったり(養子だろうけど)といったところは、あんまり事細かに描いてくれないので、作品の奥にある彼女自身をもっと知りたいところでした。
とはいえ、観終わったあとにはアニーのパワーをもらえますよ。


で、観るべし、とまでいかないけれど、無印ももったいないので、久々の……

観るぺし。

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