北方謙三「水滸伝」全19巻を読むべし!
2008年4月に、集英社文庫で毎月刊行されていた北方謙三「水滸伝」の最終19巻が出た。
昨年秋から読み続けていたのだけれど、これで読み終えたので、まとめて感想を。
「水滸伝」と言えば、北宋末期を舞台にした、梁山泊に集いし百八人の豪傑たちの物語。とはいえ、真っ当に読んだことはこれまでなく、横山光輝の漫画版ぐらい。
とはいえ、「三国志」は吉川英治も横山光輝の漫画版も面白かったけど、「水滸伝」はそんなに面白くなかったような。
それもそのはず、元々の話自体、リーダーの宋江そのものがあんまりリーダらしくない上に、反乱を始めたのに、帝から認められるといそいそと地方征伐に乗り出して最後は死んでいくという、なんだかなな終わり方。
が、この北方謙三版「水滸伝」は違う!
原作にあった伝奇要素は影を潜め(というか道術とか超能力みたいなのは北方水滸伝の登場人物は使わない)、豪傑たちを一人一人リアルな設定に肉付けしてある。宋江は結構な女好きのリーダー。林冲は凄腕だけど、妻への愛をひた隠しにしていたものの、奸計にはまって妻を殺された悲しみを背負って生きる。呉用は頭は切れるが、それ故に他の軍人たちから疎まれる。
魯智深はなんと、諸国を回って、見込んだ漢を梁山泊へスカウトしてまわるのだ。
と言った具合で、宋と闘う梁山泊の豪傑たちという大枠と、各キャラクターの名前を借りて、再構築されているのだ。
そこで、百八人の豪傑たちは登場しては片っ端から死んでいく。
実は、名うての書評家たちの絶賛の声を聞いて、それなら読んでみようかと思って昨年秋あたりから手をつけ始めたものの、最初の数巻は設定の変更とか「へえ、なるほど」と思った程度で、のめり込むほどではなかったのだ。
それが5巻で物語が急展開するあたりから、TOPギアに入って、あとは怒濤の読書三昧。そこでなんか懐かしいなあという気がしたのだ。
そう、これは「銀河英雄伝説」だよ!
いや、話は逆で、「銀英伝」が「三国志」「水滸伝」といった中国大河小説をもとに、田中芳樹がスペオペにしたのであって、それを(多分北方謙三は意識せずに)隔世遺伝的にオリジナルの「水滸伝」にしたのだ。
だから、前半のクライマックスである二竜山の攻防戦は、完全にイゼルローン攻略戦に思えてくるし、つまり5巻の展開は、「銀英伝」における2巻のラストなわけですよ。ええっ! そんな! なことになります。
で、「銀英伝」が後半ユリアンの成長物語であったように、北方水滸伝は、青面獣楊志の息子として登場する、オリジナルキャラクター楊令の成長物語となってきます。最後の戦いに間に合わせて、梁山泊に降り立った楊令に、「待ってました!」の声もかけたくなります。
対する敵もさるもの。ここは完全にオリジナルな青連寺という諜報組織が政府を操り、梁山泊軍との死闘を繰り広げます。ここでも、高俅をはじめとするキャラクターがなかなかの憎き悪役ぶりを魅せてくれますが、なんといっても一番は、後半青連寺を率いることになる李富。「銀英伝」におけるオーベルシュタイン。こいつは梁山泊を壊滅させることに全てを捧げますが、そこに至るプロセスがこれまたすごい。つい応援したくなるんですよ。
そして最終3巻は、圧倒的な力で梁山泊を追い詰める童貫との死闘に次ぐ死闘。バタバタと死んでいく漢たち。
怒濤の戦場の中で終わりを迎える物語。しかし、話はここで完全に完結はしない。数々の複線は、楊令を主役にした続編、その名も「楊令伝」に引き継がれていくのです。(全10巻予定。現在第5巻が出たばかり)
先にネタバレから言うと、おそらく、史実の北宋の滅亡までの10年を、この「楊令伝」で描くのでしょう。ということは、北方謙三は革命の実現を描いちゃうってことではないでしょうか。
待ちきれないから、読み始めようかなあ。>楊令伝
ともかく、週1冊ペースで半年近くは楽しめること間違いナシの北方水滸伝。掛け値なしで読むべし!!





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