シネマ歌舞伎「人情噺 文七元結」
三遊亭円朝の人情噺から歌舞伎の演目となった「文七元結」を、「男はつらいよ」の山田洋次監督の手で台本の補綴と演出が行われ、中村勘三郎主演の世話物として行われた舞台を、HDカメラで撮影し「シネマ歌舞伎」となった、山田洋次監督最新作「人情噺 文七元結」。
酒と博打に明け暮れる左官の長兵衛。家に帰ると、妻のお兼がひとりで泣いていた。訳を聞くと娘のお久が昨日から家に帰っていないという。さて一大事とおろおろとしていると、吉原の大籬である角海老の手代、藤助が訪ねてきた。娘のお久は、手前のところにいるという。引き取りに角海老にいった長兵衛は、お久から「自分の身を売って、その金で借金を返して真人間になって欲しい」と言われる。角海老の女房、お駒からも諭され、お久と引き替えに五十両の金を持って帰ることにした。ところがその帰り道、大川の袂で身投げをしようとした若者と出会った。その若者の身の上を聞いて、長兵衛が行ったこととは。
どこを切っても山田喜劇。
不勉強にして、「文七元結」は落語をラジオかなにかで1回か2回聴いただけ(志ん朝だったか小三治だったか)で、歌舞伎の演目になっていることなどさっぱり知らず。いやはや恥ずかしい。
今回は、舞台を撮影しているとはいえ、高解像度のHDカメラ撮影と、映画館の大スクリーンで観るおかげで、舞台収録のテレビ放映とは違って、臨場感満点。勘三郎の演技に、拍手やかけ声をかけたくなります。
中村勘三郎は、自分の世界に山田洋次監督を引き込みつつも、勝手知ったる舞台の上を泳ぎ切り、生き生きとした表情を見せてくれます。それをちゃんと欲しいところのアップで撮って見せてくれているところこそ、山田監督の面目躍如、シネマ歌舞伎のありがたいところです。
山田監督が台本を改訂しているそうですが、なにせ上記の通り元の話をうろ覚えな状態なので、どこがどう違っているか詳しくわかっていないのですが、大詰の長兵衛の家での、一堂勢揃いのところのやりとりは、まさしくとらやの寅さんを中心としたあのやりとりそっくり、いや山田監督の作品群が落語の影響を受けているわけですから、これこそ本卦還り。
長兵衛がとかくゆるくて、周りの状況がわかっていないというところの呼吸が抜群で、おかげでクライマックスのズレと大団円が二重に盛り上がるんです。
そう、大団円と書きましたけれど、近年の映画だとこうも綺麗に大団円は迎えられないわけです。なんかじみーにしみじみ終わっちゃう。
ところがこの舞台、大団円も大団円、落語のオチより十倍ものハッピーエンドで幕を下ろしてくれます。これも「舞台だから」というエクスキューズのおかげですかね。
生の舞台を観た方がいいことは百も承知、でも値段も時間も融通が利きつつ、舞台と映画の良いところ取りのこの「文七元結」をお楽しみください。
次回は映画で山田洋次監督と勘三郎のタッグを観てみたいなあ。
と、いうことを、志ん朝のCDを買ってきて聴きながら書いているんですがね、いやあ、面白すぎますわ。というオチで良いのか?







Recent Comments