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February 2009

2009.02.26

舞台「博士の愛した数式」

小川洋子のベストセラー小説であり、寺尾聰、深津絵里主演で映画化された「博士の愛した数式」が、秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場にて2006年に舞台化。大好評を受けて、新宿シアターサンモールで特別アンコール公演

脚本・演出:福山啓子
女=湯本弘美
息子=蒔田祐子
博士=森山司
夫人=井上昭子
吉田さん=伊東かおる

シングルマザーの“女”は、家政婦として働くも、やさぐれた日々を送っていた。新しい職場となった家には、風変わりな老人が住んでいた。元は数学の教授だったが、かつての事故で記憶が80分しかもたない“博士”だった。
毎日が新しい出会いと、口をつけば数学の話しかしない博士だったが、あるとき、息子を連れてくるようにいわれる。息子に博士は“ルート”と名付け、博士の家に出入りするようになる。女とルートは数学と博士の人間的魅力に気がついていくのだった。

美しい!
原作も映画もそれなりに面白かったと思ったけれど、これはそれを遙かに超えて素晴らしい舞台になっていました。
原作を読んだら、主人公の家政婦を、どうしても作者小川洋子さんとビジュアルイメージを重ねてしまうし、映画版では深津絵里が演じましたから、それはきれいなきれいな、数学と暮らす世界になっていました。

今回の舞台では、主人公の家政婦は徹底して普通のシングルマザーである面が強調され、ヘビースモーカーであり、嫌なことがあると息子にあたるしという、普通に駄目な面を持った女性になってるのです。
息子のルートもそんな母親に反発する、ごく普通の小学生です。
一方の博士も、映画版で寺尾聰が演じた博士のような、世俗を断ち切った感じのするキャラクターではなくて、浮世離れしつつも俗物的な数学の元教授になっています。

そして、そんな人物とわれわれ観客の間をつなぐ役としているのが、家政婦の先輩であり友人であり近所のおばちゃんである「吉田さん」の存在。主人公たちが数学の世界に戯れるのに、あくまで一般的な世話焼きおばちゃんが側にいるから、主人公や博士の世界がさらに身近に感じられるのです。
ここがすばらしい脚色だと思いました。台本を読んでみたいものです。


そんな彼らが、数字の世界の不思議に触れる姿が、観ているこちらも一緒になって触れているような気になっていきます。友愛数や、ルートの算数の宿題を共に学びながら、その向こうに、完全数28を背負った「阪神の江夏」の勇姿が見えてくるのです。

私たちの生きる世界と地続きの世界の住人として、家政婦も博士もルートも生きているような、長いこと会えなかった親戚に、やっと出会えたような感じでした。
だから、だんだんと記憶できる時間をだんだんと失っていく博士に、親しい親戚や友人を失っていくような痛切な気持ちで満たされていくのです。
そして、最後のシーンの、なんと美しいことよ!


青年劇場のお芝居はこれまでいろいろと観させていただきましたが、面白いものもそれなりのものも、楽しいものも、社会性に富んだものもありました。
けれど、これはこれまで観た舞台の中で一番、美しく、愛おしく、涙が出てしまう素晴らしい舞台でした。

今後も全国巡回とのことです。機会があったら、是非ご覧ください。逃しちゃいけません。
観るべし! 観るべし! 観るべし!

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2009.02.16

13日の金曜日

ホッケーマスクをかぶった殺人鬼ジェイソンで知られるホラー映画の金字塔が、「テキサス・チェーンソー」をリメイクしたマイケル・ベイ製作、マーカス・二スペル監督の手でリメイクされた「13日の金曜日」

1980年6月13日の金曜日。キャンプ・クリスタルレイクで起きた、若者たちの殺戮は、クリスタルレイクで溺れ死んだ息子の敵をとるため母親が起こした事件だった。
それから現代。閉鎖されたクリスタルレイクでキャンプをしていた若者たちが、何者かに殺されていく。それはあのクリスタルレイクで溺れ死んだと思われていたジェイソンだったのか?

シリーズが進むにつれて、ジェイソンのキャラだけが一人歩きし、ニューヨークに行くわ、宇宙まで行くわ、フレディと戦わされるわで、えらいことになっていた「13日の金曜日」シリーズ。
ここに改めてリメイクされて、クリスタルレイクでジェイソンが暴れてくれます。

なにがビックリって、冒頭のクレジットでPart1、タイトル前まででPart2をおさらいし、ここまでで20分。以後はオリジナルの展開になっていきます。
まあ、悪くないんですし、ショック演出としてはまあまあなんですけどね。
そこかしこに、今回のリメイク版製作チームが以前にやった「テキサス・チェーンソー」と同じ味がするんですよねえ。ぶっちゃけ「テキサス・チェーンソー」のボツ脚本を「13日の金曜日」に当てはめたって感じもしないでもない。

それに、ジェイソンというキャラクターが、ホラー映画の枠を超えてしまって世間に咀嚼しちゃっている以上、今回、実に丁寧に原典帰りをはたしたのに、パロディになってしまうというなんとも曰く言い難いことになっています。
そもそも、やりすぎて宇宙まで行っちゃって、しかもそれが許されるキャラクターって、ジェイソンかジェームズ・ボンドぐらいですよ。

同じように「昔見たあれを自分の手でリメイク」をしているようで、伝説化してすれていなかったのでリメイクが成功した「テキサス・チェーンソー」のレザーフェイスと対照的に、今回の「13日の金曜日」リメイクは、分が悪かったかなと思います。

そんなわけで、「13日の金曜日」って観たことのない方は、今回のリメイク版を観る前に、PART1,2あたりをDVDで観ると、意外に新鮮かもしれませんよ。

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チェ 39歳別れの手紙

スティーブン・ソダーバーグ監督、ベニチオ・デル・トロ主演による、チェ・ゲバラの生涯を描いた二部作の後編。キューバ革命後、あらたにボリビアの革命を目指して旅立ったチェ・ゲバラの姿を描く「チェ 39歳別れの手紙」

キューバ革命後、チェ・ゲバラはキューバでの地位を捨て、仲間たちと別れを告げて、ボリビアに旅立った。今度はボリビアに革命を起こそうというのだ。ゲリラ活動を行うチェとその仲間たちだったが、ボリビア軍の追っ手は、チェを追い詰めていく。

えー、前作は、映画が始まってですね、意識を失っているうちに、キューバ革命が成功していたので、今度はがんばって観ました。
で、今回も映画を観始めて、気がついたら、エラいことになってました。
考えてみれば、前作はキューバ革命というクライマックスがあるわけですが、それを盛り上げないで描いたソダーバーグの狙いをわかっていれば、後編になってから盛り上がるわけがない。

だいたい、普通の映画は行動の起点と結果を描くからドラマなんです。ところがこの映画は、意図的に行動の途中の断片を描くから、ドキュメンタリーっぽく見えるかわりに、全体の状況が分からないわけです。
ただ、ボリビア革命を目指しながら消耗していくチェの姿ということにおいては、ものすごく陰々滅々と伝わってきます。しんどいしんどい。
ベニチオ・デル・トロはもうチェになりきっていて、だけど他のゲリラの仲間がイマイチ区別がつかないから、コイツは途中で逃げたのか、いや、撃たれて死んだんだか、頭の中がぐるぐるしてきて、ますますしんどくなってきます。
これってソダーバーグの狙いだったのか?

というわけで、観たい方は、がんばって観ましょう!

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2009.02.12

ぐるりのこと。

前作「ハッシュ!」から6年。橋口亮輔監督が、法廷画家の夫とその妻の、結婚から10年間にわたる、夫婦のありようを描いた「ぐるりのこと。」


1993年7月。お腹に子供ができた妻翔子と、夫のカナオ。美大で知り合い、子供ができたことを機会に二人は結婚した。あるとき知り合いからの誘いで、法廷画家として働き始めるカナオ。それから10年という月日の中で、二人は悲しみと苦しみと喜びを共にしていく。

昨年公開されて、評判が良かったのはもちろん知っていたのですが、あれこれしているうちにチャンスを逃してしまい、昨年中には見損ねてしまいました。
で、新文芸坐で2009/2/10〜12に「闇の子供たち」と二本立てで上映となったので、ここで逃すともうないかもと急いで行ったら、朝一番から満席でいやはや。同じように見損ねて「見なきゃ」と駆けつけたんでしょう。

ようやく観たこの「ぐるりのこと。」ですが、いやー、やられました。
橋口亮輔ってこんなにうまかったっけ?

去年の一位にした「歩いても歩いても」もダイアローグが完璧だといいましたが、この「ぐるりのこと。」の夫婦の微妙なやり取りとかすれ違いがよくできてますよ。びっくりです。
後半の回復の基点となる二人の演技(嵐の夜のやり取り)なんか、涙しましたよ。

木村多江演じる妻の翔子がだんだんと追い詰められてうつになっていくところなどは、頑張っています。ちゃんと撮影にあわせて痩せていったなとか、わかりますもんね。
リリー・フランキーもまさかの好演で、素人演技ですけど、ちゃんとカナオになってますよ。いったいどこで演技を覚えたんだろう? というか演技じゃないか、あれ。ほとんど素ですが、素を演じられるというのは、本人の持っている力ですから。恐るべし、リリー・フランキー。

10年という時代の変化を、法廷画家という形で表現しつつも、よりパーソナルな夫婦という関係の中で描くというところに、沈黙の6年を乗り越えた、橋口亮輔という映像作家の成長を実感しました。

いいものは、ちゃんと折々に観ておかないといけませんね。
反省です。

それにしても加瀬亮、これを観て、「それでもボクはやってない」を観たら、「絶対お前やっているだろう!」と思ってしまうなあ。
あと、新井浩文の人でなしっぷりとか。

というわけで、観る機会がありましたら、是非。
観るべし!

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エル・スール

「ミツバチのささやき」から10年。ビクトル・エリセの長編第二作は、生まれ故郷を捨てて、スペインの北部に暮らす一家の物語「エル・スール」


1957年。少女エストレリャは、父が家を出て帰らないことを悟る。エストレリャは小さい頃、この家に越してきてからの父と母の思い出を回想するのだった。

光を捉えた美しい映像は、「ミツバチのささやき」から変わらないけれど、この映画単独で観ていると、主人公の父の心情とか、背景がよく分からないわけです。
実のところ、スペイン内戦で、南の故郷を追われた父親の政治的社会的背景があることは映画を観たあとになって知ったわけですが、それがないと、単にフラフラしてるお父さんにしかみえないんですよね。

じゃあ展開がわかりやすくて、社会背景も全部説明してくれる映画だったら、これが名作と呼ばれたかというと、難しいもので、実はよその国の固有の背景もよく分かっていない映画を、我々は勝手に推察しつつ、感動していたりする訳です。
でも、背景がわからないのに、主人公の父が抱える悲しみは伝わって来るのですから、そこに作品の持つ力と普遍性があるんでしょう。


このあと、やはり10年後に「マルメロの陽光」を世に送り、さらに10年後にオムニバス映画「10ミニッツオールダー」の1本「ライフライン」を世に出して、現在まで短編2作、長編3作という寡作ぶり。次作は2012年か?

もう一人の寡作監督、テレンス・マリックが、「シン・レッド・ライン」を1998年に送り出して、これからまた20年待つのかと思ったら、「ニュー・ワールド」を2005年に、なんと新作「The Tree of Life」が今年観られるというから、これはこれで驚きですね。

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2009.02.08

ベンジャミン・バトン 数奇な人生

セブン」「ファイト・クラブ」でのコンビ、ブラッド・ピット主演、デヴィッド・フィンチャー監督が三度タッグを組んだのは、F・スコット・フィッツジェラルドの短編小説を原作に、老人で生まれ、若返りながら成長する男の一生を描いた「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」


1918年。第一次世界大戦が終結したこの年、一人の男の子が生まれた。母親の命と引き替えにこの世に生を受けたその子は、生まれたときは老人のような姿だった。その名はベンジャミン。彼は父親に捨てられ、老人ホームで働く黒人女性の手で育てられていく。長くない生命と思われたベンジャミンだったが、成長と共にその姿は若返っていく。そしてある時、運命の出会いを果たすのだった。

デヴィッド・フィンチャー監督作で、まさかの感動作を観るとは、思いもよりませんでしたよ。
だいたい、これまでの「エイリアン3」「セブン」「ゲーム」「パニック・ルーム」「ゾディアック」と観ていくと、きれいに傑作駄作の波がくる監督です。わたしとしては「ゾディアック」は傑作だと思う上、今回の「ベンジャミン・バトン」は三時間の大河ドラマですからね、こりゃかなりヤバいんじゃないかと思っていましたが……。

大傑作!
若返っていく男という題材を、デジタル撮影と、特殊メイクとCGを駆使して、フィンチャーの意図通りの完璧主義的映像が描けるようになったのです。時代がフィンチャーに追いついたということかな。

題材こそ奇抜ですが、誰しも感じる、一時も止まることのない人生の喜びと悲しみを、フィンチャーの盟友、ブラッド・ピットと、芸達者なケイト・ブランシェットが、三時間という上映時間の中で、みせてくれます。
特殊メイクとCGが凄いといっても、実は子供から老人までを演じきる二人の演技力に支えられてのことですからね。目立つのはブラッドの方ですが、実はそれ以上にケイト・ブランシェットの方がもっと凄かったりします。どこまでメイクや特殊撮影の部分か分かりませんが、歳とると、本当に中年や老人になるんだもんなあ。

脇を固めるベンジャミンの父親や育ての親、途中に出会う船長や婦人など、これまた芸達者ぞろい。最後のエンディングの映像で、不覚にも涙させられましたよ。まさかフィンチャーで情に泣かされるとは。なんという人間賛歌、素晴らしきかな、人生!

三時間という上映時間は、やはりちょっと長いかなと思いますが、それを押しても観る価値のある一本。是非アカデミー賞発表前に、ご自分の目でご覧ください。

観るべし!


全然関係ないんだけど、冒頭の話に出てきた時計職人、最初アラーキーかと思った。(笑)

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2009.02.04

ミツバチのささやき

10年に一本という超寡作のスペインの映画監督ビクトル・エリセの長編第一作にして、スペインのみならず世界映画の傑作の地位を誇る「ミツバチのささやき」。
ユーロスペースにて、「エル・スール」と連続でレイトショー公開

スペインの小さな村で暮らす少女アナは、姉のイザベルと共に、巡回上映で「フランケンシュタイン」を観る。フランケンシュタインの怪物が、精霊としてアナの心に宿る。養蜂家の父や母と日常を過ごす娘たちだったが、そこにある事件が起きるのだった。

「ミツバチのささやき」「エル・スール」がニューマスターDVD-BOXで発売されたので、それにあわせてリバイバルレイトショー公開ということでしょうか。
約90席のユーロスペースがほぼ満席だったから、「ミツバチ~」の人気、いまだ衰えずというところでしょう。

これを観る前に、いろいろ理由があって「フランケンシュタイン」をDVDで久々に再見したのですが、フランケンシュタインの怪物と少女の出会いのシーンは、この古典映画の劇中で、異彩を放つ美しさなんですよね。
それがこの「ミツバチ~」で引用されたが故に、なおのこと神話が神話として補強されたという感じです。

スペインの小村の風景の、光を柔らかく捉えた美しい撮影が、スクリーンで観てこそ伝わってきます。
そしてこの映画の魅力である少女アナのかわいらしさ。主人公の少女を演じたアナ・トレントは、最近「ブーリン家の姉妹」にも出演していたんですが、全然気がつかなかった。
コンスタントに出演作が公開されるハリウッドスターならともかく、そうでないと、アナはずっとあのままだとついつい思っちゃう。 映画って、撮られた時を永遠に生き続けますよねえ。

後半で出てくる人物、実は何かしらの人物との関係、特に母親との……とか思っていたんですが、それはそう考えられるかもしれないけれど、劇中ではいかなる人物か、説明はしていなかったんですね。
そしてアナが出会うアレが何かも説明はしていないけれど、個人的には出会ったんだと思いたいところです。
観終わってすぐに、割り切れるという内容でないかもしれないけれど、しばらく経つとなにかがじわじわ残る感じの作品です。


えー、今更これに観るべしをつけるとかつけないとかいうレベルの作品ではないので、観たことのない方は、この機会に劇場で是非。2/6まで。2/7からは「エル・スール」がレイトショー公開。
無理な方はDVDを購入しても良いかと。

ところで、「マルメロの陽光」は? やってくれないのかなあ?

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2009.02.01

20世紀少年<第2章>最後の希望

浦沢直樹原作の大長編マンガを、唐沢寿明主演、堤幸彦監督により三部作で映画化する第二弾。平愛梨演じるケンジの姪カンナが“ともだち”の謎を追う「20世紀少年<第2章>最後の希望」


前作のラスト2000年12月31日「血の大晦日」で巨大ロボットと共に、東京の中心は消え、ケンジは姿を消し、仲間もちりぢりになってしまった。
時は過ぎ、2015年。“ともだち”は日本全体を支配しつつあったが、ケンジの姪カンナは、不思議な力を持った少女に成長していた。
ケンジの遺志を継ぐように、生き残ったオッチョ、ヨシツネたちの協力のもと、カンナは“ともだち”の正体を追うのだったが。

三部作で前作を観ちゃった以上、今回も観るしかないですわね。
今回も原作の10巻分ぐらいを2時間半にまとめている上に、繋ぎの章である以上、仕方ないかもしれませんが、メリハリが無くて、延々ハリハリばかりのような気がします。
前作は原作のあのシーンを再現、というところにある程度の感心もしたのですが、観慣れてしまうと、原作の画をもとに絵コンテを切って、それに役者の芝居を当てはめているので、芝居の不自然さが目立っちゃう。
今回の主役である平愛梨はがんばっていたと思います。一生懸命カンナになりきろうとしていましたし。
でも、小池栄子ぐらいかな、不自然な芝居を自分のキャラクターにきちんと昇華しきったのは。
「プライド」で及川光博の漫画的演技を褒めたけれど、小池栄子という人も、ミッチーとはまた違った形で、ハマると上手さが光りますね。
去年評判だった「接吻」を見逃したのは失敗だったな。

実写での人間の芝居を、漫画的リアリズムに近づけるというのが本当に正解なのかな、と思うのは、結局、マンガを実写で絵解きするだけにしかなっていなくて、2時間半、何らの映画的躍動感を感じないからでもあります。だったらアニメでいいじゃん、という身も蓋もない台詞を言いたくなるのよね。

でも、ここまでくると最終章を観ないと、決着つかないからね。
8/29の最終章公開を待つことにしましょう。

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マンマ・ミーア!

ABBAのヒット曲を題材に、大ヒットしたミュージカルを、メリル・ストリープ主演で映画化。ピアース・ブロスナン、コリン・ファースら豪華キャストでおくるミュージカル映画「マンマ・ミーア!」


美しいギリシャの島で暮らすソフィーは結婚式を控えて、三人の男性に招待状を送った。それは、かつて母ドナと付き合った三人の男性、サム、ハリー、ビルであり、ソフィーの父親の可能性があるのだ。ソフィーは本当の父親をしり、バージンロードを歩くことを夢見る。一方ドナは、島でホテルを経営している。あちこちガタがきているし、いつも請求書に悩まされているが、いまは花嫁の結婚式の準備で大忙し。そこに、三人の男性が島にやってくる。ソフィーの本当の父親は? 無事にソフィーの結婚式は行われるのか? 

21世紀になって、メリル・ストリープが、ここまでテンション高く、歌って踊る姿を観ることになるとは思いもよりませんでした。
かなりがんばって歌と踊りに挑戦しているのですが、舞台だとともかく、映画だとリアルに役者の年齢が見えてしまうので、設定上40代の主人公の女性ドナを、もう60代にかかったメリルが演じて、20歳そこそこの娘がいる(しかも演じているのが、結構童顔の娘さんなので余計にそう見える)というのは、ちょっと違和感を感じます。(実際のメリルの娘さんがいくつかということとは別にして)

でも、映画の迫力に押されて、だんだんどうでもよくなってきます。
とにかく、全編ABBAの歌が彩りながら、全員の演技のテンションが高いので、そこで乗れればあとはラストまで一気に楽しめます。
あまり深いことを考えず、美しいロケーションと、歌と踊りに身をゆだねればいいのです。

相手役のピアース・ブロスナンが、これまたボンド役から身を退いて老けたとはいえ、さすがのダンディズム(とちょっと三枚目)を見せてくれて、「007/慰めの報酬」ダニエル・クレイグの6代目ジェームズ・ボンドが失ってしまったものを、ここでやっと見た気がします。なんていうか腑に落ちたというか。ダニエルボンド、作品はまあ良いんだけど、辛すぎるのよ。もうちょっと砂糖とか入れると味にふくらみが出るのにね、とかさ、思っちゃう。

全体的に、キャストは貫禄があっていいけど、もうちょっと10歳ぐらい若かったら完璧だったな、と思うんですけど、映画全体から漂う余裕は逆に出せなかったかも。メリルもピアースも、コリン・ファースも、「マディソン郡の橋」「007」シリーズや「高慢と偏見」の頃だったら、もっとガツガツしすぎて、映画的ふくらみに欠けていたかもしれません。

劇場は女性客でいっぱいでしたが、舞台を観た方も、なかなか舞台まで足を運べないという方も、ABBAを好きな方も、知らない方も、一緒に楽しんで観ましょう。

観るべし!

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